最近、新聞やニュースでよく目にするメガソーラー(大型太陽光発電所)。一般的に出力が1MW(メガワット)=1000kW(キロワット)以上の太陽光発電を「メガソーラー」と呼びますが、この「1MW」という数値はモジュールパネルの定格容量(公称最大出力)であり、つねに1MWの電気を創エネするわけではありません。
では、定格容量と実際の出力量にはどれほどの差があるのでしょうか?
モジュールパネルの定格容量(公称最大出力)の定義
まず押さえておきたいのが、下に記したモジュールパネルの定格容量の定義です。
「JISC8918で規定する分光分布AM1.5、放射照度1000W/㎡、モジュール温度25℃の設定条件で、1kWの発電能力のあるモジュールを公称最大出力1kWという」
専門用語が多くて難しい内容ですが、大切なポイントは
①放射照度1000W/㎡で1kWの発電能力があること
②モジュール温度25℃の設定条件で計測すること
の2点です。
①の放射照度1000W/㎡とは、1㎡あたり1000Wの日射があるという意味で、夏至のころの晴れた日の正午近くの日射量に相当します。
②のモジュール温度25℃は、現実にはほとんどない条件です。なぜなら、結晶シリコン製のモジュールパネルの表面温度は、日射を受けると冬場でも40℃前後、夏場には60℃以上に上昇するからです。
つまり、定格容量とは理想的な条件のもとでの能力値で、自然に理想的な条件が整うことはまずありません。
もっとも出力量に影響するのは、天候と太陽高度
さて、上の定義を踏まえて、定格容量と実際の出力量の差を検証してみましょう。わかりやすくするため、ここではスマートハウスに5.1kWの太陽光発電を搭載したと仮定します。
ご存じのとおり、太陽光発電の出力量は日射量に比例しますので、晴れて日射量が多い日は出力量が多く、くもりや雨の日は少なくなります。もちろん、日射のない夜間に出力することはありません。
また、同じ快晴の日でも、夏と冬では太陽高度が異なるため、出力量は大きく変わります。太陽高度は夏至と冬至で46度も差があり(北緯35度の場合)、日射量も太陽高度に応じて大きく変動します。つまり、春~夏にかけては出力量が増えますが、秋~冬は出力量が減っていきます。
さらに、日射量はモジュールパネルに日射が垂直に入ったときに最大になりますので、パネルの傾斜角度も出力量に影響します。

フラット屋根に傾斜角10度でパネルを並べた場合。夏至のころ、パネルへの日射角度がほぼ垂直になります。冬至前後は日射角度が浅くなり、出力量が低下します。

勾配屋根に傾斜角30°でパネルを並べた場合。春分・秋分の少し前に日射角度が垂直になります。夏至のころは太陽高度が垂直を超えてしまい、出力量がやや低下します。
各種ロスも少ないながら影響がある
ほかに、出力量を下げる要因に各種ロスがあります。モジュール温度が上昇することによる温度ロスは、結晶シリコンの場合、温度が1℃上がれば発電効率が約0.5%落ちることがわかっています。
また、太陽光発電で創った電気は直流電流ですので、これをパワーコンディショナーで交流電流に変える変換ロスが約5~7%。配線の電気抵抗ロスやパネル表面の汚れによるロスも、全体から見ればわずかですが発生します。
このような要素をすべて含めた結果、太陽光発電の実際の出力量は定格容量の約70~80%、冬場なら50%程度になることもあります。
つまり、5.1kWの住宅用太陽光発電なら、その最大出力量の目安は次のように試算することができます。
気候条件のいい春先は 5.1kW × 80% ≒ 約4kW
気候条件の悪い冬は 5.1kW × 50% ≒ 約2.5kW
HEMSで実際の出力量を調べてみる
次に、太陽光発電の出力量を計算ではなく、実際に計測してみましょう。実際の出力量は太陽光発電の電力モニターでも把握できますが、HEMSならわかりやすいグラフで見ることができます。
上のスマートハウスの場合、5.1kWの太陽光発電を搭載していますが、夏場の正午ごろの最大発電量は約4kW。つまり、この太陽光発電の最大出力量は約4kWで、前述の試算と一致します。
このように太陽光発電とHEMSを併用することで、創エネや電力消費の状況を正確に把握することができます。